白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「…………」

彼の眼が、言ってみろと告げている。

えっと、確か……。

私は胸の前で両手をギュッと握りしめた。

「ミ、ミカヅキ……ん?違うな。えーっと、タテカナヅチ、あれ?」

やばい、ほんとになんだっけ。

眼の前の男前神様は、黙って私を見つめている。

緊張のあまり背中に冷や汗が伝った。

「タ、タ、タテ、タテミカ」

「もういい」

若干イラついたような神様の声が響き、私は小さくごめんなさい、と謝った。

「俺の名は建御雷神(たけみかづちのかみ)だ」

「あっ、そう言おうと思ってたんです」

私がエヘッと作り笑いをしながらそう言うと、彼はわざとらしく両目を細めて唇を引き結んだ。

「ご、めんなさい、ややこしい名前が苦手で」

「……では、ミカヅチで許してやる」

「……ミカヅチ」

「呼び捨てかよ」

「すみません」

「…………」

「…………」

痛い。ミカヅチ様の視線が痛い。

シゲシゲと品定めするように彼は私を上から下まで見ていたが、やがて小さく息をついた。

「胸もなければケツもねえな」

「へ?」
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