白鷺の剣~ハクロノツルギ~
◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「いいよ、乗っていきな!その代わり荷台は揺れるから組紐を見ておいてくれ。大事な商品だからな!それと今回は太助に頼まれている味噌漬けなんかも運ぶからよろしくな!」

威勢の良い若いお兄さんは、私を見て大きく頷くと、ハキハキとした口調でそう言った。

「夕方までにゃ城下町の武家屋敷の北の着物屋に着くからよ」

「はい、お世話になります」

◇◇◇◇

予定より大分早く、私は姫路に到達した。

「柚菜ちゃん、助かったぜ。あんたが乗ってくれたお陰で馬の速度を上げることが出来た。ありがとな。これで城下で一杯やれる」

組紐以外にも反物が多数あり、その他にも食品を積んでいたために、砂埃や、風による乾燥に注意せねばならず、私が常に様子を見ていたのが幸いして、度々止まらずに済んだのが良かったらしい。

「お役に立てて嬉しいです。正太さん、こちらこそありがとう!」

「早く着いた礼だ。目的地まで乗せていってやるよ」

「本当ですか?!凄く助かります!」

私は意気揚々と白鷺の家を告げた。

すると意外なことに正太さんは、

「西山の白鷺さんの家じゃないか。有名な刀匠だからな、俺も知ってるよ。組紐を切る小刀を注文したこともあるんだ。
しかもな、ちょっといわくありげな話もあるんだ。
……何でもその昔、井戸に放り込まれたお菊さんは白鷺流の刀で斬られたそうな」

嘘でしょ?!

……お菊さんの話は、播磨の地では有名だ。

無実の罪を着せられて斬り殺され、城内の井戸に惨たらしく投げ込まれた話は『播州皿屋敷』として有名な怪談話だ。
< 129 / 197 >

この作品をシェア

pagetop