白鷺の剣~ハクロノツルギ~
そう言って白鷺一翔を差し出すと、彼は刀に視線を落とし、再び私を見つめた。

その時、

「柚菜、柚菜じゃねえか!」

「宗太郎!!」

宗太郎が砂利道を走る音が響き、私と白鷺に距離が生まれた。

「柚菜、会いたかったぜ!」

宗太郎が私をきつく抱き締めてブンブンと振り回すように揺するから、私は慌てて口を開いた。

「宗太郎、苦しいよ」

「さあ来いよ、飯にしよう!」

宗太郎は私の手を握ると砂利道を戻り始め、私は慌てて白鷺を見上げた。

白鷺は腰に落としたままだった着物の袖を掴んで腕を通すと、静かな声で私に言った。

「帰るぞ、柚菜」

「うん」

嬉しくて、切なくて、胸が一杯で、この一言が私の精一杯だった。
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