白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「柚菜、どうした」

涼やかな白鷺の眼が私を心配そうに見つめていて、私は反射的に神棚に置かれた白鷺一翔を見上げた。

「白鷺一翔で、以蔵さんが人を斬ったの」

私の言葉に二人が息を飲んだ。

「以蔵さんとの潜伏先に、男の人が二人乗り込んできて……」

白鷺が気遣うように私を見つめた。

「怪我はなかったのか」

「うん……でも、以蔵さんが斬った男の人達が」

白鷺が何も言わず瞳を伏せた。

その表情はやりきれない思いを抱えているようで、私は苦しかった。

暫くの後、

「知ってる。俺が作った刀だから」

私はそう言った白鷺を窺うように見つめて、遠慮がちに問いかけた。

「白鷺……。白鷺一翔は、どうして妖刀になってしまったの?」

白鷺は一瞬押し黙った。

それから私を見ずに言った。

「お前は知らなくていい」

またしても拒絶され、胸がズキッと痛む。

「……知りたいよ白鷺。私、知りたい」

「おい柚菜、箸が止まってるぞ。どんどん食え。で、飲め」

宗太郎が私を気遣うように明るく声をかけてくれたけど、私はどうしても諦められなかった。
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