白鷺の剣~ハクロノツルギ~
私はマジマジとミカヅチ様を見つめた。

髪こそ長いけど、精悍な顔立ちと逞しい体つきは武術の神に相応しいと思う。

……思うんだけど。

私はおずおずと口を開いた。

「あの、そろそろ白鷺の脇差を見てもいいですか?お祖父ちゃんが起きて来る前に見ておきたくて」

ミカヅチ様は呆れたように私を見た。

「そんなに気に入ったのか」

私はコクンと頷いた。

「顔が赤いぞ」

変な感じだった。

フワフワと浮くような感覚。

気恥ずかしくて、でも会いたくて。

「勝手にしろ」

私はペコリと頭を下げるとミカヅチ様に背を向けて、棚の扉を開けた。

ドキドキと煩い心臓をなんとかなだめつつ、脇差の布を解く。

「……さすがだな、白鷺は」

私の背後からミカヅチ様は脇差を覗き込むと続けた。

「だが、あいつは腕が良すぎた。それが悲劇の始まりだったな」

私は咄嗟にミカヅチ様を振り仰いだ。

「どういうことですか?」

「……知りたいか?」

「はい」

私は即答した。

現代に語り継がれている名だたる刀匠の中に、『白鷺』の名はない。

それが何故か。
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