白鷺の剣~ハクロノツルギ~
業物を作る腕がありながら、どの文献にも記されていない『白鷺流』を知りたい。

「教えてください、この脇差を生み出した白鷺の事を」

瞬間的に、ミカヅチ様がニヤリと笑った。

ゆっくりと唇を引き上げ、まるで私がこの言葉を口にするのを待っていたと言わんばかりに。

かかったな。

声に出さずそう告げる彼の笑みに、私は眼を見開いた。

「……見てこい、自分の眼で」

「……へっ?」

「ついでに白鷺に剣を一振りさせてこいよ」

「は?」

私は眉を寄せた。

そんな私を見てミカヅチ様は続けた。

「そもそも、お前のジジイが悪い。この俺の剣を六道の神社に奉納しようとしやがって。そんなことされたら俺はこの先自由に動けなくなる。剣神の座を狙ってるヤツは多いんだ」

「……あの、どういうことですか?」

「お前には考える頭がないのか。
……つまりこの剣は言わば俺自身だ。神社になんぞ封じ込められたらこの先地獄だろーが!だからお前が行って、白鷺に代わりの剣を作らせろ。ちゃんと俺の名を彫らせろよ」

私は焦った。

ミカヅチ様の話はまるで、私が過去の日本に行って白鷺に会い、剣を作らせて持ち帰れと言っているみたいだ。

「みたいじゃなくて、その通りなんだよ。お前が持ち帰った剣を、俺の剣の代わりに神社に奉納する。じゃないと封印が解けない」

全身に鳥肌が立ち、彼を見上げたまま私は息を飲んだ。
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