白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「わざと俺を怒らせてるのか」

私は眉を寄せて白鷺を見上げた。

頬が触れそうな距離。

なに考えてんの?

胸が苦しくて、切ない。

だってキスできそうな距離なのに、私には届かない人。

なのにどうしてこんなに近くに来るの?

片想いなんて長年忘れていたけど、なんて苦しくて切ないんだろう。

なのに人の気も知らないで。

白鷺の仏頂面が、逆に私を腹立たせた。

だって私は起きたところで、気づいたら白鷺がいて怒ってて。

「白鷺ってさ、たまに言ってることが意味不明だし鈍いよね。そんなんだと、あの胸のでっかい美女に振られちゃうわよ」

しまった、胸のでっかいは余計だった。

なんか胸が小さいのをひがんでるみたいじゃん!

正直、ひがんでるけどな!

チラリと白鷺を見ると、彼は眼を見開いて私を見ていた。

ああ、気まずい!!

なにか言わなきゃと思い、慌てて言葉を付け加える。

「あの、薬を塗ってくれてありがとう。実は私、今日は忙しくて。あの…えっとその…じゃあね」

私は白鷺に手を振ると部屋を飛び出した。
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