白鷺の剣~ハクロノツルギ~
◇◇◇◇◇◇◇


あのまま宗太郎の家を飛び出し、私は慈慶さんのお寺へと来ていた。

突然の訪問にも関わらず、慈慶さんは温かく私を迎えてくれた。

「その男の方は、うちの寺に無縁仏として眠っておいでです」

昨夜の宗太郎の話は有名らしく、慈慶さんも知っていた。

それで白鷺一翔も名が知れて、以蔵さんがやってきたんだな。

……多分、以蔵さんだけじゃないんだと思う。

慈慶さんは私を見ながら口を開いた。

「お墓に案内いたしましょうか」

「是非お願いします」

良かった。

偶然にもその男の人のお墓が慈慶さんのお寺にあって。

「ここです」

お寺の北側に無縁墓地はあった。

大きな椎の木が沢山あって、夏のわりには涼しかった。

私はひとつの苔むした墓石の前に座ると手を合わせた。

それから慈慶さんを振り返り尋ねた。

「この人は……成仏しているのでしょうか」

慈慶さんは私を見つめて静かな声で答えた。

「私が思うには……まだ刀に宿ったままなのではないかと」

……やっぱり。

「この人の生前の行いは決して良くはなかったと思います。けどもし今、刀に宿っているのだとしたらそれは辛いことではないのですか?」
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