白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「雅……」

先に白鷺が声のした方を見て呟き、私はそんな白鷺の横顔を見つめたままコクンと喉を鳴らした。

雅さんが生き霊の正体なの?!

彼女が生き霊……!?

何故?!

頭が混乱し、身体までもがいうことをきかない。

「お嬢さん」

澄んだ声で雅さんが私に話しかけた。

控えめな草履の音が私のすぐ横で止まる。

「探していたの。きっとこの間、白鷺に会いに来た時に忘れて帰ったんだわ」

雅さんはそう言うと、スッと私に手を伸ばした。

「ありがとう」

差し出したままだった懐剣をそっと手に取って胸元にしまうと、雅さんは白鷺を見上げて甘く笑った。

「白鷺、部屋に行きましょう」

「雅、俺は……」

グッと眉を寄せて突っ立ったまま動かない白鷺の胸に、雅さんが頬を寄せた。

「会いたくて来たのよ……抱いて、白鷺」

ガツンと殴られたような感じがして、私はクラリとよろけた。

胸がえぐられるように痛い。

雅さんは恋してやまないといった表情で白鷺を見つめていたけど、白鷺は彼女とは対称的な顔をして、血を吐くように言葉を発した。

「雅、それは出来ない。俺はもう」

白鷺がそう言いかけたとき、雅さんが唇を引き結んで白鷺の胸元をキュッと掴んだ。
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