白鷺の剣~ハクロノツルギ~
……雅さんと抱き合ってるに決まってる。

私は以前見た、白鷺と雅さんのラブシーンを思い出して胸に手を当てた。

ダメだ、死にそう。

嗚咽を洩らしてしまいそうになったその時、宗太郎がしっかりとした口調で私を諭した。

「白鷺を好きなら、アイツを信じてやれよ」

顔をあげた私を見て宗太郎は続けた。

「お前は白鷺を好きなんだろ?なら、アイツの抱えているものをしっかり見ろ。アイツのために精一杯頑張れよ。精一杯頑張ってダメならその時考えればいい。覚悟決めろよ。お前が好きになった男は、覚悟を決めなきゃならない相手なんだ。その価値がある男だよ、西山白鷺は」

宗太郎……。

泣けて泣けて仕方なかった。

宗太郎の優しい眼差しと、私を勇気づけてくれる言葉に涙が溢れた。

そうだ。

報われなくてもいいと思ったのは嘘じゃないもの。

たとえ先のない恋でも、白鷺を苦しみから救い出したい思いに代わりはない。

私はくじけた心を振るい立たせるように深呼吸をすると、真っ直ぐに宗太郎を見つめた。

「ありがとう、宗太郎。
私、今度こそ負けないわ。白鷺を守る。命を懸けて」

宗太郎は心配そうな表情で私を見るとこう言った。

「雅の生き霊に打ち勝てるのは、心底アイツを愛してるお前しかいないと思ってる。だが、お前がまた危ない目に遭うのには反対だ」

宗太郎は言いながら立ち上がると、部屋の隅に置いていた一刀の日本刀を手に取った。

「これを持っていけ」
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