白鷺の剣~ハクロノツルギ~
宗太郎が私の手に脇差を握らせながら頷いた。

「この脇差の名を聞きたいか?」

「……名前?」

宗太郎がニヤリと笑った。

「柚姫」

ユウヒメ……。 

「お前の事だよ、柚菜」

ああ、白鷺。

本当に白鷺は私を大切に思ってくれていたんだ。

私は涙を拭くと立ち上がった。

「宗太郎、私行かなきゃ!」

「危なくなったらそれを使え」

私はしっかりと頷くと身を翻して部屋を飛び出した。

少しでも早く走りたくて、長い着物の裾をまくり上げて砂利道を駆け出すと、白鷺の顔を思い浮かべた。

その時、遥か前方の木々の間に、見知った着物が見えた。

「柚菜!!!」

……白鷺!

「白鷺!」

一心にこちらに走ってくる白鷺に、私は思いきり名を呼ぶと走り寄った。

「白鷺!」

「柚菜!」

ああ。やっぱり離れられない。

離れたくない!

こちらに伸ばされた白鷺の両腕の中に、私は思いきり飛び込んだ。
< 171 / 197 >

この作品をシェア

pagetop