白鷺の剣~ハクロノツルギ~
◇◇◇◇◇◇
その夜。
白鷺は何も言わなかったから、私もその事について何も言わなかった。
ただ私達は並んで、他愛もない話をして夕食を食べた。
でも私は確信していた。
雅さんは、今夜必ず来る。
生き霊となって、私に会いに。
きっと彼女は私の想いに気付いた筈だ。
部屋に入ろうとする二人の後ろから、白鷺を呼んだ私の声で。
あの夜、薄暗い部屋から私めがけて飛んできた懐剣と、それが頬をかすめた冷たい感覚を思い出して唇を噛んだ。
あれよりひどい目に遭わされるかもしれない。
私が脇差『柚姫』を抱き締めたその時、低く静かな白鷺の声がした。
「雅は……俺がひどい目に遭わせてしまった男の娘なんだ」
身体がヒヤリとして、私は白鷺を見つめた。
白鷺は一瞬私を見たけど、直ぐに床に視線を落とした。
「俺は償わなきゃならない」
……だから、白鷺は雅さんの望みなら叶えようとするんだ。
自分に対する彼女の好意も、白鷺は撥ね付けるわけにはいかないと思ってるんだ。
私は白鷺を見つめた。
オレンジ色の炎が白鷺の精悍な頬を照らしいて、更に凛々しく見える。
私は少し息をついてから、ゆっくりと口を開いた。
その夜。
白鷺は何も言わなかったから、私もその事について何も言わなかった。
ただ私達は並んで、他愛もない話をして夕食を食べた。
でも私は確信していた。
雅さんは、今夜必ず来る。
生き霊となって、私に会いに。
きっと彼女は私の想いに気付いた筈だ。
部屋に入ろうとする二人の後ろから、白鷺を呼んだ私の声で。
あの夜、薄暗い部屋から私めがけて飛んできた懐剣と、それが頬をかすめた冷たい感覚を思い出して唇を噛んだ。
あれよりひどい目に遭わされるかもしれない。
私が脇差『柚姫』を抱き締めたその時、低く静かな白鷺の声がした。
「雅は……俺がひどい目に遭わせてしまった男の娘なんだ」
身体がヒヤリとして、私は白鷺を見つめた。
白鷺は一瞬私を見たけど、直ぐに床に視線を落とした。
「俺は償わなきゃならない」
……だから、白鷺は雅さんの望みなら叶えようとするんだ。
自分に対する彼女の好意も、白鷺は撥ね付けるわけにはいかないと思ってるんだ。
私は白鷺を見つめた。
オレンジ色の炎が白鷺の精悍な頬を照らしいて、更に凛々しく見える。
私は少し息をついてから、ゆっくりと口を開いた。