白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「白鷺。あなたは間違ってるし、雅さんも間違ってる」

その時部屋に風が吹いて、行灯以外の蝋燭の炎が全て消えた。

反射的にビクリと身体が跳ねる。

来たんだ、雅さんが。

私は大きく息を吸い込むと、素早く立ち上がって白鷺を見た。

「白鷺、下がってて」

「柚菜!うっ……うわぁ…!」

「白鷺っ」

急に白鷺が苦しみだしたかと思うと床に倒れ込んだ。

「白鷺っ!」

意識はあるのに、白鷺は喋ることが出来ず、身体の自由が奪われているようだった。

きっと雅さんの仕業だ。

私は帯に脇差『柚姫』を差すと、白鷺の身体を引きずって部屋の隅の壁にもたれさせた。

「待ってて白鷺。あなたを絶対に助けるから!」

私は白鷺にそう言うと、部屋の真ん中へ戻り、腰の柚姫を抜き放った。

「雅さん!姿を現して!」

「私に立ち向かう気なの、小癪な!」

地の底を這うような恐ろしい声がしたかと思うと、神棚の白鷺一翔がフワリと浮き上がった。

それから抜けた鞘が床に落ち、カランと音を立てて転がる。

「柚菜、気をつけろ」 

弥一さんの声だ。

「お前達は引っ込んでなさい!」
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