白鷺の剣~ハクロノツルギ~

刀匠白鷺

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

……一度眼が覚めた気がする。

誰かに声をかけられて手を握られたような……気のせいかな?

……いや、気のせいじゃない。

声の主は男性だったけど、決して拓也じゃなかったのに私は拓也と呼んで……。

……あれだけ身体が沈みそうで怖かったのに、今はもうその感覚はない。

蒸せ返るような暑さも、身体に響きながら抜けていくあの鋭い金属音も、今はもう聞こえない。

ここ、どこ?

ベッドじゃないのは直ぐに分かった。

硬い床に寝かされている感覚が、背中に広がっているから。

……背中?

背中といえば、凄く背中が痛かったんだっけ確か。

……えーっと、確か……あっ、そうだ!

私、ミカヅチ様に過去の日本にすっ飛ばされて……。

ヤバい……凄くヤバい。

私は恐る恐る眼を開けた。

途端に、眼を開けたことを凄く後悔した。

……嘘……。

見てしまったショックからか、クラリと目眩がした。

眼を開けてすぐに飛び込んできた天井は高く、梁が剥き出しで古めかしかったし、そこにあるべき照明器具も見当たらなかった。

ミカヅチ様の言葉が脳裏に蘇る。

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