白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「あなたはもしや……!」

宗太郎と村外れの寺の住職である慈慶さんが、驚いたように現れた男を見上げた。

「おい、お前ら。ちょっとおとなしくしてろ」

それから漆黒の瞳の男は、飛び交う青白い光の玉を見て、懐からなにかを取り出した。

あれは……!

見覚えがあった。

たしか……柚菜の背中に……。

驚く俺には眼もくれず、男は続けて口を開いた。

「刀から解放された魂共!柚菜の勇気に感謝するんだな!浄化してやるからさっさと失せろ!」

ギラリと黒い瞳を光らせて男が剣を一振りすると、青白い光の玉は音もなく消えていき、瞬く間に跡形もなくなった。

「おのれ、小癪な……!」

苦し気な息遣いとその言葉をきいて黒髪の男は忌々しそうに舌打ちすると、雅の生き霊に向き直った。

「おいそこの生き霊。よくも俺の可愛い妹分を痛め付けてくれやがったな」

漆黒の瞳が怒りに燃えていて、男がどれだけ柚菜を大切に思っているのかが、手に取るように分かった。

「俺の可愛い妹に手ぇ出してただですむと思うなよ」

雅の生き霊の眼から涙が溢れるのが見えた。

「どうして、私じゃダメなのよ……白鷺……」

俺を見て、雅が苦痛に頬を歪めた。

「雅、すまない」

「愛してくれさえすれば……許すのに」
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