白鷺の剣~ハクロノツルギ~
言うなり再び呪文を唱え始め、剣神ミカヅチはきつく眉を寄せて眼を閉じた。
たちまちのうちに柚菜と剣神ミカヅチの周りに激しい赤い炎のような靄が巻き起こり、俺はその赤い炎に弾き飛ばされた。
住職と宗太郎も壁まで吹き飛び、顔をしかめている。
赤い膜のようなものは、荒々しく風を巻き起こしながら柚菜と剣神を包み込んでいて、その激しさに俺は思わず眼を細めた。
漸くその膜の赤みが消えていき風が治まってきた頃、剣神ミカヅチの声が響いた。
「ああ、力を使い果たすところだったぜ」
荒い息を繰り返しながら剣神ミカヅチは額の汗をぬぐい、カランと懐剣を床に放り投げた。
「これ、お前があの生き霊の本体に作ってやったんだろ」
俺は立ち上がりながら頷くと、その懐剣を見つめた。
「念は殺しといた。持ち主に返してやれ」
床に放り出された懐剣を手に取ると、剣神ミカヅチは真正面から俺を見つめて低い声で続けた。
「借りは返したぜ、刀匠白鷺。くどいようだが柚菜は俺の可愛い妹みたいなもんだ。大事にしないとただじゃおかねぇぜ」
俺が深く頷くと、剣神ミカヅチは男らしい頬を僅かに歪めて笑った。
「じゃあな。柚菜に宜しく言っといてくれ」
「ミカヅチ様」
「あ?」
肩越しに振り返った剣神ミカヅチに、俺は白鷺一翔を拾い上げて差し出した。
「これをお納めいただきたい」
剣神ミカヅチは、俺を見下ろして唇を引き結んだが一言低い声で問い掛けた。
たちまちのうちに柚菜と剣神ミカヅチの周りに激しい赤い炎のような靄が巻き起こり、俺はその赤い炎に弾き飛ばされた。
住職と宗太郎も壁まで吹き飛び、顔をしかめている。
赤い膜のようなものは、荒々しく風を巻き起こしながら柚菜と剣神を包み込んでいて、その激しさに俺は思わず眼を細めた。
漸くその膜の赤みが消えていき風が治まってきた頃、剣神ミカヅチの声が響いた。
「ああ、力を使い果たすところだったぜ」
荒い息を繰り返しながら剣神ミカヅチは額の汗をぬぐい、カランと懐剣を床に放り投げた。
「これ、お前があの生き霊の本体に作ってやったんだろ」
俺は立ち上がりながら頷くと、その懐剣を見つめた。
「念は殺しといた。持ち主に返してやれ」
床に放り出された懐剣を手に取ると、剣神ミカヅチは真正面から俺を見つめて低い声で続けた。
「借りは返したぜ、刀匠白鷺。くどいようだが柚菜は俺の可愛い妹みたいなもんだ。大事にしないとただじゃおかねぇぜ」
俺が深く頷くと、剣神ミカヅチは男らしい頬を僅かに歪めて笑った。
「じゃあな。柚菜に宜しく言っといてくれ」
「ミカヅチ様」
「あ?」
肩越しに振り返った剣神ミカヅチに、俺は白鷺一翔を拾い上げて差し出した。
「これをお納めいただきたい」
剣神ミカヅチは、俺を見下ろして唇を引き結んだが一言低い声で問い掛けた。