白鷺の剣~ハクロノツルギ~
盃を置いた白鷺の瞳が甘く輝いていて、私はゴクリと喉を鳴らした。

白鷺の首から肩にかけての逞しいラインや、少しはだけた着物からチラリと見える厚い胸板が私をドキドキさせる。

やだやだ、私、欲求不満みたいじゃん!

正直飢えてるけどな!

「早く来い」

「あ、あのっ!」

私の大きな声に驚いたのか、白鷺は少し眉を上げた。

「あの実はね、私ずっと聞きたいことがあったの。白鷺に」

「……なんだ」

傍に寄れと言ったのをスルーしたからか、少し苛立たしげな白鷺は、私を斜めに見つめた。

「あのね、白鷺流って名前は、白鷺城からとったの?それに白鷺流はいつから?」

「……?」

白鷺は不思議そうに首をかしげた。

「……私の住んでた時代にね、白鷺流の記録がなくて……。ほかの有名な刀匠は、名刀と言われる刀がいくつも残ってるし記録もある。
でも白鷺の刀の記録は何もないみたいで……。
どうして?」

私のたどたどしい質問に、白鷺はホッと息をついて答えを返した。

「白鷺流とは、刀の地肌の模様が羽根のようだからと聞いている。
俺の名前の『白鷺』は、城からとったらしい。……父に聞いたことはないが恐らく、流派名と合わせただけだと思う」

白鷺は続けた。

「記録がないのは、白鷺流は代々忍刀を専門としていたらしいから、そのせいかも知れないな」

「忍刀って?」

「忍びの者が持つ、特殊な刀だ。流派を確立した初代から俺の父の代までは、主に忍び……いわゆる忍者と呼ばれる者達に刀を作っていたらしい」

忍者専門の日本刀……。
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