白鷺の剣~ハクロノツルギ~
……雅さんだ。
私はあの夜の決戦と胸に受けた刀の痛みを思い出して息が止まりそうになり、次第に恐怖が全身に広がった。
徐々に早くなる鼓動と、みるみるわき上がり背中を伝う冷や汗。
私は瞬きも忘れ、ただ戸口を張り付いたように凝視した。
「白鷺、話があるの」
「柚菜、下がってろ」
白鷺が土間に降りて戸口に近づく。
怖い、どうしよう……!
白鷺は私を振り返ることなく戸口を少し開けた。
雅さんの美しい顔がチラリと見える。
「白鷺、お別れを言いに来たの」
白鷺が戸口を開け終わる前に、雅さんはこう切り出すと儚げな微笑みを見せた。
「備前の母の調子が思わしくなくて……それであちらで縁談を」
「雅……」
何か言いかけた白鷺を、雅さんは言葉で止めた。
「明日、早くに立つから今日の内にお別れを言っておきたくて……。
白鷺、今までありがとう。どうぞお元気で」
雅さんはそう言うと、フウッと視線を私に止めた。
それから柔らかい声で私に声をかける。
「お嬢さん」
「……はい」
「白鷺とお幸せに」
こう言って深々と頭を下げると、彼女はゆっくりと踵を返した。
「雅、これを」
「あら……!」
私はあの夜の決戦と胸に受けた刀の痛みを思い出して息が止まりそうになり、次第に恐怖が全身に広がった。
徐々に早くなる鼓動と、みるみるわき上がり背中を伝う冷や汗。
私は瞬きも忘れ、ただ戸口を張り付いたように凝視した。
「白鷺、話があるの」
「柚菜、下がってろ」
白鷺が土間に降りて戸口に近づく。
怖い、どうしよう……!
白鷺は私を振り返ることなく戸口を少し開けた。
雅さんの美しい顔がチラリと見える。
「白鷺、お別れを言いに来たの」
白鷺が戸口を開け終わる前に、雅さんはこう切り出すと儚げな微笑みを見せた。
「備前の母の調子が思わしくなくて……それであちらで縁談を」
「雅……」
何か言いかけた白鷺を、雅さんは言葉で止めた。
「明日、早くに立つから今日の内にお別れを言っておきたくて……。
白鷺、今までありがとう。どうぞお元気で」
雅さんはそう言うと、フウッと視線を私に止めた。
それから柔らかい声で私に声をかける。
「お嬢さん」
「……はい」
「白鷺とお幸せに」
こう言って深々と頭を下げると、彼女はゆっくりと踵を返した。
「雅、これを」
「あら……!」