白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「……」

それって……。

もうダメだ、死ぬ。

「白鷺ったら」

私が真っ赤になって俯くと、白鷺は屈み込んで私の唇にキスをした。

「っ……」

甘い甘い白鷺の口づけに、私は思わず眼を閉じた。

僅かに口内に触れた白鷺の舌先に、身体中が熱くなる。

「……白鷺」

「柚菜」

白鷺の少し節の目立つ指が、頬を撫でて首筋へと伝い、私はその心地よさにゾクッとして白鷺に抱きついた。

「可愛すぎるお前が悪い」

ああ、ダメだ。

彼がそう言って甘い眼差しを向けたから、私は観念して囁いた。

「白鷺が欲しい。全部」

「全部お前だけのものだ」

二度目のキスはもっと深くて凄く甘くて、私は白鷺に身を委ねた。

生きていこう、ここで。

動乱の幕末も、程なくしてやってくる明治維新も、これから訪れるであろう幸せや困難の中でも、私はしっかりと生きていける。

だって、白鷺の傍にいられるんだもの。

「白鷺、大好き」

私は再びそう言うと、白鷺を強く抱き締めて眼を閉じた。

真夏の暑い昼、賑やかな蝉の声が私と白鷺を包んでいた。






    白鷺の剣~ハクロノツルギ~

          完
< 196 / 197 >

この作品をシェア

pagetop