白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「刀工なら沢山いる。他を当たるんだ」

冷たい声と、切れ長の瞳に浮かぶ侮蔑の光。

私の眼からポロリと涙がこぼれた。

それから段々ムカついてきた。

……私だってこんなところに来たくなかった。

土を押し固めたような土間にあるカマドや、大きな水瓶。

古いせいなのか、掃除が行き届いてないのか分からないけど、暗くて古ぼけた部屋。

……何で出逢っちゃったんだろう、白鷺の刀と。

出逢わなければ、こんな所に飛ばされたりしなかった。

私を惹き付けて離さない程の刀を作ったあなたが悪い。

なのにケンもホロロに断り、拒絶するなんて。

私は背の高い白鷺を見上げて睨んだ。

「あなたの刀と出逢わなきゃ良かった。あんなに焦がれなきゃよかった」

「柚菜、さん……」

泣いてしまった私を見て、白鷺はギクリとたじろいだ。

もう、ヤケだ。

「大体、あなたが妙な刀を作るから悪いんじゃないのっ!売ってくれるまでは傍を離れない!」

私は、白鷺に正面から抱きついた。

何としてでも剣を作ってもらわなきゃならない。

じゃないと帰れない。

こんなテレビもスマホもない古い時代に暮らすなんて耐えられない。

「貴女、男に飢えてるんですか?」
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