白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「……へ……?」

驚いて顔を上げると、氷のように冷たい眼をした白鷺が私を見下ろしていた。

白鷺は続ける。

「なんというか見たところ『行き遅れ』みたいですし」

どこまで冷たくて失礼な男なんだ。

後ろで赤茶が弾けるように笑い、私は怒りのあまり叫んだ。

「なんですって失礼なっ!『出戻り』ですけど行き遅れてません!あっ!」

しまった、自分から出戻った事をバラすなんて。

情けなくて悲しい。

この先の見通しが全く立たない。

私は白鷺から一歩下がって離れると、涙を拭った。

「……今日は……もう帰ります」

「おいお前、家あんのかよ?」

ねえよっ!

赤茶に心の中で荒々しく返答しながら、私は口を開いた。

「どこか、宿泊できるところを探します」

この時代がいつなのかは未だ分からないけど、ホテル……とは呼ばないだろうけど、旅館?宿屋?はあるだろう。

と、ここで再び一文無しだと言う事実を思い出す。

けど、ここにはいられない。

チキショウ、ミカヅチのヤツ。

もはや彼を神様だとは思えなかった。

ただのわがままな男前……いわゆる流行りの俺様なだけだ。
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