白鷺の剣~ハクロノツルギ~
明るい茶色の瞳が私を見つめる。

端正な顔立ちが凄く素敵で、私は顔がカアッと熱くなった。

「ねえ、あの、離して」

「お前……本当に商売女じゃないのか」

「だから違うってばっ!もう、離してっ」

腰と腰が密着し、宗太郎の息がかかるほどの近い距離に、私は恥ずかしくて窒息寸前だ。

その時、宗太郎がフッと笑った。

「な、なにっ」

「なんだ、こんなに真っ赤になって……男と抱き合うのが初めてな訳じゃないだろ?」

「そりゃ始めてじゃないよ、結婚してたし!離婚しちゃったけど」

「捨てられたのかよ」

「……っ」

宗太郎は私からそっと離れると、瞳を優しくして笑った。

それから落ち着きなく家中を見渡して口を開いた。

「……独り暮らしだから、掃除とか大してしてなくて汚いんだ。けど、ほんとに行くとこねぇなら、ここにいてもいいぜ」

「…………」

それはかなり助かる。

だって、お金がないんだもの。

それにここは白鷺の家から真っ直ぐ15分程下った場所にあり、迷うこともなさそうだ。

でもなぁ……。

宗太郎に襲われそうな気がする。

やっぱりダメだ。

私は宗太郎を見上げて言った。

「私、本当にそういう仕事じゃないの。だからその、体で家賃を払うとか食費を払うとか無理なの。だから明日になったら街へ連れて行ってくれない?
何処か住み込みで働かせてくれそうなところを見つけるから」

私がそう言うと、宗太郎は白い歯を見せた。
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