白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「お前が商売女じゃないのは分かった。襲わないから安心しろ。その代わり飯作ってくれ。な?」

「……ご飯?そんなんでいいの?」

宗太郎は頷いた。

「ああ。未来の飯、食わせろよ」

宗太郎の瞳は綺麗で、私は少し安心してウン、と頷いた。

「じゃあ……暫くの間、よろしくお願いします」

この世界で第一歩を踏み出せた気がした。

◇◇◇◇◇◇◇◇

宗太郎は貧乏ではなさそうだった。

いや、こんな言い方は失礼だけど、21世紀の人間である私からすると、何もかも古びて見えてしまう。

台所だって、ガスでも電気でもない。

食材もスーパーがあるわけじゃないし、洗濯も食器洗いも眼の前の小さな幅の狭い小川でやるらしい。

火を起こすのは宗太郎がやってくれる約束だ。

当然のごとくというか予想通り、最初に炊いたご飯は失敗した。

「なんだよ焦げ臭い飯だな」

「だって、宗太郎が適当にしか教えてくれなかったからっ!」

「お前、飯炊いたことねーのかよ、どんな位の高い家に生まれたんだよ」

「炊飯器があるんです、未来には!ご飯を自動で炊いてくれる賢い機械!」

「ほーほー、それは随分ご立派だな。さ、飯食ったら仕事に行くぞ」

宗太郎は、白鷺と一緒に刀工として働いているらしい。
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