白鷺の剣~ハクロノツルギ~
仕事場は、私が倒れていた白鷺の家の隣。

「歩けるか?」

「うん。宗太郎がくれた草履と手拭いのお蔭」

私がそう言いながら微笑むと、彼は気恥ずかしそうに咳払いをした。

「そのうち、着物も買ってやる」

「えっ、いいよ。私は当分これで。それにそこまで甘えられない」

「じゃあ、着物代は身体で」

「ばかっ!」

他愛もない話をしている間に、私たちは白鷺の家に到着した。

「白鷺……おっと!」

「痛っ!急に止まんないでよ」

玄関の敷居をまたごうとしたところで宗太郎が急に立ち止まり、私は見事に彼の背中に顔面をぶつけた。

そんな私に宗太郎は振り向きニヤリと笑った。

「おっと、お前は見ない方がいいぜ。刺激が強すぎる」

へ?

とかなんとか言いながら、宗太郎は身体を斜めにして、私に部屋の中を見せた。

「…………っ!」

「な?」

白鷺が、女の人を抱いていた。

私は、全身の血が引き潮のように身体からなくなってしまうような感覚に硬直した。

昨日私が寝かされていた布団で、白鷺が綺麗な女性を抱き締めていたのだ。

白鷺は直ぐに私たちに気づくと、何事もないかのように女性に回していた腕を解いた。
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