白鷺の剣~ハクロノツルギ~
低い声でそう言うと、宗太郎は至近距離から私の瞳を覗き込んだ。

切り込んだような二重の眼が苛立たしげに光っていて、私はその迫力にコクンと息を飲んだ。

「宗太郎……?」

「柚菜、道分かるだろ。お前はもう帰ってろ。俺が帰るまで家から出るなよ」

「で、でも……」

「うるせぇ、イライラさせんな」

「……分かった」

何で宗太郎がイラついてるのかは、明白だ。

私が長々と白鷺を引き留めて話をしていたせいで、いつまでも仕事を始められないからだ。

宗太郎に怒られたことがショックだった。

だって彼は、私を助けてくれた人だから。

「ごめん、宗太郎」

私がそう言うと、宗太郎は驚いたように私を見つめた。

やがて険しかった眼差しが優しいものに変わる。

「……もういいから、家で待ってろ」

一瞬宗太郎は腕に力を込めて私を抱き締めると、そっとそれを解いた。

「うん……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

白鷺の家も宗太郎の家も集落から離れているらしく、道中ではまだは人に出会っていない。

……どこで食材を調達しているんだろう。

かまどから数歩離れた場所の、紐で吊るした籠の中を覗き込みながら、私は首をかしげた。
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