白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「宗太郎とは、その」

宗太郎?

「……はい?」

「俺がいない間に浮気するなと伝言を」

は?

私はフッと笑った。

「なんだそれ。宗太郎の冗談はつまんないですね」

「だから……宗太郎と柚菜は、その、」

「私と宗太郎?そんな関係じゃないですけど。私、そういう仕事の人じゃないですし」

「それは分かっている。こんな貧相な身体で客が取れるとは思えないので」

サラッと失礼な事を言うな、白鷺は。

「悪かったですね、胸もお尻もなくて。てか大体、どうして私と西山さんはこんなにくっついているんですか?」

私がムッとして白鷺を見上げると、白鷺は呆れたように口を開いた。

『白鷺、白鷺っ、今なんか、部屋の隅で動いたっ!虫っ?!やだやだ、怖いから一緒に寝て!』

たまらなくなって私は飛び起きた。

「重ね重ね、すみませんでした!」

もう、最悪だ。

恥かきっぱなし。

「私、凄く酔っぱらってたんですね。途中から記憶がありません。本当にごめんなさい」

床に頭を擦り付けて謝ると、白鷺は起き上がってクスクスと笑った。

「もういい。とにかく宗太郎が帰るまで、俺の家に」

「……ほんとに……いいんですか?」

白鷺が微笑みながら頷いた。

「ありがとう、西山さん」

お礼を言った声が大きすぎたのか、白鷺は僅かに眉を寄せながらそっぽを向いた。

「白鷺でいい」

私は白鷺にペコリと頭を下げると眼を閉じた。
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