白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「随分坂本龍馬が気になるんだな」

澄んだ眼差しで真っ直ぐ見つめられて、私は内心焦りながら答えた。

「別に、そういうわけじゃ……」

ドラマの、龍馬役だった俳優は大好きだけど。

かなり年上だけど、セクシーで素敵だよな……。

なーんて思いながらその俳優の姿を思い描いて一瞬デレッとしてしまったが、まだこちらを見ている白鷺に気付いて慌てて咳払いをした。

「あの、なにかお手伝いしま」

「いい」

なぜか素っ気なく答えると、白鷺は土間に降りて部屋から出ていってしまった。

機嫌を損ねたような……。

あれやこれやと聞いたのが悪かったのか。

私は小さく息をつくと、白鷺のくれた着物を見つめた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

多分だけど……二時間後ぐらい。

「早速だけど……今晩から働いてくれるかい?」

「はいっ!よろしくお願いします」

やったあ!

私は小躍りしたい気分だった。

最初に入ったお店は仕立て屋さんだったが、未経験だというと断られた。

次に働きたいとお願いしに行ったお店『玉椿』で、

「お酒も大好きだし、お料理も得意です」

と言ってニッコリ笑うと、

「橙色の髪なんてめずらしいねぇ!しかもここいらにいる女よりもあか抜けてるし……じゃあ、お酌しながら客の話し相手なんかも頼めるかい?」
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