白鷺の剣~ハクロノツルギ~
相場とか解らないし給料は安いかもしれないけど、客の相手なんていってもキャバクラよりはマシだろう、多分。

店も居酒屋のような、御食事処みたいな感じだしな。

店内は……まあ多分普通なんだろうと思う。

机と椅子はいかにも手作りといった感じで、現代でいうところのカウンター席もある。

窓には細い竹の格子がはまっていて、なかなかいい感じだ。

人の良さそうな中年夫婦のオーナーさんは、

「通いでも住み込みでも構わないよ。二階に四畳半の部屋がひとつ空いてるからね」

そう言ってニッコリと微笑んだ。

「はいっ!じゃあ、住み込で頑張らせていただきます !」

ああ、凄く嬉しい!

私は案内された四畳半の部屋に寝そべると、天井を見て大きく息を吸い込んだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

夕方。

店はめちゃくちゃ忙しかった。

スタッフは私を含めて5人。

ご主人がうどんや蕎麦を打ち、女将さんが天ぷらやお惣菜を作っているらしかった。

あとはご夫婦の娘さんと息子さんが皿洗いや接客をしていて、家族じゃないのは私だけ。

「柚菜ちゃん、あちらのお客に熱燗ね」

「はい!」

「お?見慣れない顔じゃないか」

「今日からこちらで働かせていただく事になりました。どうぞよろしくお願いします」

陽が暮れて暗くなる頃には、大体が男性客だった。

大人数で楽しげにお酒を飲む人達や、静かに独りでゆっくりと過ごす人もいて、私がいた21世紀のお店となんら変わりがなかった。

「柚菜ちゃん、あんたすごいねえ!客一人一人をしっかり見て、お茶を出す頃合いや、皿の引きぎわなんかが、卒なくて」
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