白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「帰るぞと言ったのが聞こえないのか」

刺すように冷たい白鷺の声に、私はビクッとして立ちすくんだ。

途端に、強く引かれた腕とのバランスが狂い、地面に膝をついた。

大きな石が膝にあたり、思わず顔をしかめる。

そんな私を白鷺が冷たく見下ろしていた。

「立て」

「……西山さん、話を」

「家につくまでは話さない」

何なんですか、と言いたい。

彼は大金を稼いできたら剣を作ると言ってくれたし、宗太郎に頼まれたから家に置いてやると言う前は、私が来ると迷惑だってはっきり告げたじゃん。

なら、私が住み込で働いてなんの文句があるのですか?!

それからの白鷺は、本当に家に着くまで一言も口を開かなかった。

多分、体感的には40分位だと思う。

ただただ、私の手を握って彼は歩き続けた。

◇◇◇◇◇◇◇

それが家の入り口を一歩またいだ途端、

「なにを考えているんだ」

振り向くなり白鷺はギラリと私を睨んだ。

いい加減にして欲しかった。

「何って……?あの、どうして怒っているんですか?
あなたにお手伝いを断られたから私はすることがなかったし、大金を稼いできたら剣を作るといってくれましたよね?それにあなたは私がここにいたら迷惑だって言ったじゃん。
なのに、いざ仕事を見つけて働いたらムッとして呼び戻す。
意味が分からないんだけど!」

白鷺のイライラが伝染したのか、私は腹が立ってきた。
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