白鷺の剣~ハクロノツルギ~
白鷺が叩き付けるように私に言葉を返した。

「あんな店で働いたって俺の刀は買えない」

「それはあなたの根性が悪いからでしょ!?私に売りたくないから値を引き上げてるのよね?!」

まるで言葉を止めることが出来なかった。

彼に嫌われて、剣を作ってもらえなくなったら終わりなのに。

「宗太郎に言われたから?彼の留守中、私を家に置いてやれって。
宗太郎に叱られるのが嫌だから?!だったらこう言えばいい。
『秋武柚菜は、別の刀工に剣の製作を頼むことにしたから出ていった』ってね!」

ああ、言っちゃった!

そんな気ないのに、言っちゃった!

私はギュッと眼を閉じて、大きく息をついた。

もう終わりだ。

今の段階で私は、この世界で生きていくしかなくなったのだ。

眼を開けると、白鷺が私を凝視していた。

涼やかな瞳で。

唇を引き結んで。

もう、いいや。

いや、だめだけど、もうどうしていいか分かんない。

多分二度と会えないけど、ミカヅチに会うことができたら殺してやる。

神様が殺せるか謎だけどな!

私は白鷺の脇をすり抜けるようにして部屋に上がると、着物の帯をほどいた。

「さっき、地面に膝をついて汚しちゃったけど……着物は返すわ」

このときの私はほぼヤケだった。
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