白鷺の剣~ハクロノツルギ~
◇◇◇◇◇◇◇◇



「もう、柚菜とは一緒にいられない。離婚してくれ」

深夜零時の薄暗いリビング。

私は夫である石嶺拓也の顔をマジマジと見つめた。

「……へ?」

拓也の言ってる意味が分からずに、私は顔を傾けて彼を凝視したけど、そんな私を見つめて、拓也はネクタイを緩めながら大きく息をついた。

まるで、私のせいだと言わんばかりに。

「柚菜はさ、俺なんか愛してなかったんだよ、最初から」

は?

「なんで?何でそんなこと言うの?」

「俺達は結婚するのが早すぎたんだ」

確かに私と拓也は出逢って三ヶ月で結婚し、しかも私は21歳という若さだった。

でもそれは、

『俺の家族は俺がガキの頃からバラバラだった。
だから俺はずっと、早く自分の家族を作りたかったんだ。
柚菜。俺はまだまだ半人前だけど、きっと立派な男になるよ。だから俺と家族になってください』

真っ直ぐに私の眼を見てそう言った拓也を愛していたからだ。

なのになに?今の言葉は。

「……意味が分かんないんだけど。好きじゃないなら結婚なんかしないよ」

私はポツンと呟くように拓也に言った。

拓也はカチャリとダイニングテーブルに鍵とスマホを置いて続けた。
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