白鷺の剣~ハクロノツルギ~
ハクロイッショウ?

……それが、白鷺流の刀に付けられた名前だというのは分かる。

岡田と名乗った涼やかな男性が、戸口に預けていた身体をおこした。

「白鷺一翔は売り物じゃない」

「呪われし妖刀だからか?なら」

月のような男性……岡田さんは、一旦言葉を切るとニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

それからゆっくりとこちらに歩を進める。

白鷺がかばうように私の前に立った。

フッと笑いを洩らして岡田さんは続けた。

「白鷺一翔が本当に妖刀ならば……俺にこそ相応しい刀だ」

ドキッと私の鼓動が跳ねた。

この人、もしかして……いや、違うかもしれない。

でも、もしかしたら。

私は白鷺の脇から岡田さんを見つめた。

この、冷えきった鉄のような冷たい雰囲気。

何かに心を囚われ、頑ななまでに己の信じた道をひた走るような目付き。

彼の眼の奥に、自分の信じる道を貫くためならどんな犠牲も犠牲と思わぬ精神があるように思えて、私は寒気がした。

早鐘のように響き渡る胸の音が煩い。

岡田さんが笑みを消して腰の刀を抜いた。

スラリと抜いたその刀は、そう明るくない室内でありながらキラリと光り、私は思わず息を飲んだ。

その光を見た途端、白鷺が身を翻して神棚に走り寄ると、そこに置いてあった刀を手に取り、切っ先を岡田さんに向けた。

「……っ!」
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