白鷺の剣~ハクロノツルギ~
◇◇◇◇◇◇◇◇

二日後。

「白鷺っ、見て見てっ!」

「…………」

白鷺の家から上手にしばらく進むと、谷にぶつかる。

「ねえ、これなんて魚?」

「……アマゴ」

白鷺は何だか不機嫌だ。

まあね、私といる大半が不機嫌なんだけれども。

「嫌なら付いてこなきゃよかったじゃん」

私はスウェットの裾を太股までまくり上げて落ちてこないように折り込むと、白鷺に借りた深いザルにアマゴを入れながら呟くように言った。

「宗太郎がかえってくるのに、何にもなかったら可哀想じゃん」

私がそう続けると、白鷺がフンと鼻を鳴らした。

水際ギリギリに立って腕を組んでいる白鷺は、私を見つめたまま唇を引き結んでいる。

私は大きくため息をつくと小さな波を起こしながら水の中を歩き、白鷺の前まで行くと彼を見上げた。

「ねえ、白鷺。なんで機嫌悪いの?」

白鷺は更にムッとして私を見つめる。

「そんな顔してたらモテないよ?女の子に嫌われるよ?」

私がそう言うと、白鷺は皮肉げな顔でニヤッと笑った。

「…俺は誰かと違って見下り半を突きつけられた経験はない」

「なんですって?!」
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