白鷺の剣~ハクロノツルギ~
キスに酔った事なんてなかった。

このキスに出逢うまでは。

ずっと白鷺とキスしていたい。

この腕を、水に落ちたこの腕を彼の身体に回したら、私はどんどん深みにはまるだろう。

彼のキスに答えるように口を開けると、白鷺が少しだけ唇を離した。

フッと眼を開けると視線が絡んだ。

それから白鷺の唇を見つめると、もうダメだった。

何かを見極めようとするかのような彼の瞳にも耐えられなかった。

「白鷺、もっとして」

「柚菜」

もうなにも考えられなくなって、私は白鷺の首に両腕を絡めた。

白鷺の心は分からないけど、少なくとも私は夢中だった。

そう、白鷺のキスに。

◇◇◇◇◇◇◇◇

その夜。

「……酒は?」

「あ、うん」

やけに白鷺を意識してしまって、私は彼の飲んでいたお酒をもらった。

飲んだらリラックス出来るかなと思って。

お猪口のお酒をぐっと飲み干した私を、白鷺は静かに見ていたが、

「柚菜、歳は?」

「……23歳。白鷺は?」

「昨日25になった」

「えっマジで?!
おめでとう!
……なんで言わなかったの?!言ってくれたらお祝いしたのに」
< 64 / 197 >

この作品をシェア

pagetop