白鷺の剣~ハクロノツルギ~
白鷺は私を真っ直ぐ見つめている。

「えらく見惚れていたようだが」

鋭。

「凄く顔が私の好みで……痛っ!」

白鷺は急に私の髪をひと房掴むとグイッと引っ張ってから、両目を細めて軽蔑したように私を見た。

「では……宗太郎は?」

「はあ?!」

気が抜けてしまって、私は間抜けな声をあげた。

「まあ、宗太郎も男らしい顔つきだし格好いいし、性格も明るくて優しいし、いい感じだと思うけど」

私が言い終えて白鷺を見つめると、白鷺がため息をついた。

「そんなこと、誰も聞いてない。
……明日、宗太郎が帰るとお前はここを出て、アイツの家へ行くのかと聞いてるんだ」

そ、れは……。

私は昼間の、白鷺とのキスを思い出した。

『白鷺、もっとして』

男にあんなことを言ったのは初めてだ。

白鷺はどう思っただろう。

キスしたからって愛されてるなんて思っちゃう程幼くないつもりだ。

キスなんてその場の盛り上がりとか、雰囲気にほだされてしちゃう場合もあるだろうし、なんと言うか、その……。

言い訳がましい胸の内はきっと、キスしただけでまとわりつく面倒な女だとか思われたくないから。

私はぎこちなく言葉を返した。

「宗太郎さえ……よければ」

ポツンと呟くように私がそう言うと、

「そうか」
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