白鷺の剣~ハクロノツルギ~
刀工にとって刀は我が子同然だ。

そんな大切な白鷺一翔が、妖刀だと言うだけでも辛いはずなのに、奪われてしまったなんて。

しかも幕末の人斬りに。

私がしつこく白鷺の傍にいたからこんなことになったような気がしてならなかった。

「白鷺。私のせいなのにこんなこと言ってもダメかも知れないけど……私、あなたの力になりたい」

私がそう言うと、白鷺はこちらを見つめてから、私の後頭部に手を回した。

白鷺が私に近づいて、私も白鷺に近付きたくて、回された手の動きに任せ、額が彼の胸にトンと当たる。

無意識に両腕を白鷺の腰に回すと、白鷺がビクンとして身を離した。 

僅かに空いた二人の間に新しい空気が入り込み、私はそれが嫌で凄く不安で、眉を寄せて白鷺を見上げた。

「白鷺、離れないで」

白鷺は驚いた顔で私を見ていた。

拒絶されるのが怖くて、私はしがみつくように白鷺の身体に頬を寄せて、そのはだけた胸元にキスをした。

「柚菜……」

戸惑うような白鷺の声。

「白鷺が嫌ならもうしないから……今だけ許して」

私はそう言うと、もう一度白鷺の胸に唇を寄せた。
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