白鷺の剣~ハクロノツルギ~
剣は作ってもらえない。

働かせてももらえない。

『白鷺一翔』は奪われてしまったし、暗い夜、独りで寝なきゃならない。

それに21世紀には帰れないし、おまけに好きになった白鷺には嫌われてる。

私は息をついて身体の力を抜いた。

……私には……なにもない。

どうすることも出来ないのだ。

ポロリと涙がこぼれた。

「嫌いなら……そう言ってよ」

「柚、」

私は涙を止める事が出来なかった。

「私が嫌ならそう言ってよっ!そしたら剣はもう頼まないし、ここからも出ていくよっ!白鷺はずるいよっ!なんでキスしたの!?白鷺なんか大嫌いだよっ!」

「……柚菜」

「白鷺っ……」

眉根を寄せてギュッと眼を閉じると、白鷺は私を抱き締めて囁くように言った。

「嫌いなわけないだろう。俺は……」

白鷺の腕の中で私は次の言葉を待ったけれど、彼はそれ以上続きを言わなかった。

嫌いじゃないの……?

なら、もういい。

嫌われてないならそれでいいよ。

だって私は白鷺が好きだから。

やがて白鷺が私から離れると数歩歩き、神棚へと手を伸ばした。

「……柚菜、これを」

嘘。
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