白鷺の剣~ハクロノツルギ~
私は眼を見開いて、白鷺が手にした剣を見つめた。

これって、これって……!

声の震えを止める事が出来なかった。

「白、鷺、どうして」

信じられない思いで白鷺を見上げていると、彼は苦しげに笑った。

「柚菜が寝てる間に」

動揺しているせいなのか、いまいち状況が理解できない。

なんで?!なんで白鷺は剣を?!

あんなに頼んでも作ろうとしてくれなかったのに。

「……どうして……あんなに嫌がってたのに……それに私、お金が払えない」

白鷺の刀はとても高価だって……。

「金なら要らない。夜が明けたら剣を持ってもとの世界へ帰るんだ」

白鷺はそう言うと、私から視線をそらして横を向いた。

この世界へ飛ばされた直後の私なら、泣いて喜んでいただろう。

けど、今の私は……!

「白鷺、私がいない方がいいの?だから作ろうと思ったの?」

「…………」

白鷺は眉を寄せて瞳を伏せたまま押し黙っている。

「白鷺」

「夜が明けたら、さよならだ」

白鷺はそう言うと、踵を返して私に背を向けた。

蝋燭の炎が均整のとれた白鷺の身体を柔らかく照らしていて、私はその美しい姿を茫然と眺めた。
< 88 / 197 >

この作品をシェア

pagetop