白鷺の剣~ハクロノツルギ~
焼きも入ってるし、刃も先だけじゃなく全体に入っている。

素晴らしいとしか言いようがなかった。

「これであの神社に住まなくてよくなるぜ。おいお前、明日ジジイとあの破戒僧んとこ行って来い」

「なんでよっ!しかも六道さんは、宮司!」

「白鷺の剣を奉納して、俺の剣にかけられた封印解くんだよ」

私は箱からミカヅチの剣を取り出し、白鷺の作ってくれた剣と見比べた。

「白鷺の作った剣があまりにも立派すぎて、ミカヅチの剣じゃないってすぐにバレるんじゃないの?」

瞬間、ミカヅチが私の頭をパシッとはたいた。

「痛いじゃん!」

「無礼なブスだなお前はっ!
……お前は白鷺に剣を作らせた当人だからそう思うだろうが、ジジイも六道も、まさかこんなにすげえ剣が何本もあると思うわけねーだろ。俺の名が刻んである剣が別物だなんて考えねえよ」

そうだろうか……。

私はミカヅチに手を伸ばし、白鷺の剣を受け取るとジッと見つめた。

明日になったらこの、白鷺の剣とも別れなきゃならないんだ。

白鷺……。

ポロリと涙が頬を伝うと、私は堪えきれなくなって俯いた。

切なくて、胸が痛くて、どうしようもない。

「なんだよ……一体どうし……」

ミカヅチは私に問いかけたが、白鷺の剣を胸に抱いて泣く私を見て唇を引き結んだ。

白鷺にもう会えない。
< 91 / 197 >

この作品をシェア

pagetop