白鷺の剣~ハクロノツルギ~
彼が一振りしてくれたこの剣とも、明日でお別れだ。

明日になれば私と白鷺が過ごした日々の証も、私の手から離れてしまうのだ。

あんなに帰りたかった21世紀なのに、私は胸が苦しくて喜ぶことが出来なかった。

白鷺に会いたい。

もう一度、顔が見たい。

「お前もしかして……白鷺が好きなのか」

押し黙っていたミカヅチが、静かに口を開いた。

「……うん……」

彼はポロポロとこぼれる私の涙を暫く見ていたが、やがて溜め息をついて私に手を伸ばした。

大きな親指で私の頬を拭うと、

「困ったヤツだな、お前は。なんでそーなるんだよ」

煩そうに長い前髪をガシガシとかき上げると、ミカヅチが黒曜石のような瞳で私を覗き込んだ。

「説明しろ」

面倒臭そうな口調とは裏腹に、その瞳は柔らかくて優しい。

私は少しだけ息をつと、ポツリポツリと話し出した。

白鷺と過ごした日々を思い返しながら。
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