白鷺の剣~ハクロノツルギ~
眉を寄せて狭い空間を凝視してみるも、全然思い出せない。

そんな私を見て、ミカヅチは盛大にため息をついた。

「言っただろ、それなりの礼はすると」

ああ……そう言えば。

「別にいいよ。欲しいものなんかないし」

そうだ。

何もない。

帰りたかった21世紀に戻れたのに、白鷺がいない世界なんて嬉しくもなんともないのだから。

「アホかお前は」

ミカヅチが、イラついたように私を睨んだ。

それから、低い声で私に問う。

「このままでいいのか」

「……え?」

声が掠れた。

「もう会えなくていいのか?白鷺に。惚れちまったんだろーが」

ギュッと胸が軋んだ。

それって……。

「ミ、カヅチ……」

白鷺の広い肩幅や、端正な顔を思い出すと切なくて苦しくて、私は口を開けて震える吐息を漏らした。

込み上げる涙を堪えることが出来ない。

そんな私を、ミカヅチは至近距離から見つめた。

「連れてってやってもいいぜ。六道の封印が解けた俺は無敵だからな」

私の返事はとっくに決まっていた。

「連れていって、ミカヅチ」

「バカだな、お前は」
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