そこにいた

「ハァハァハァハァハァハァ。」







うまく息が吸えない。






「綾ちゃん!?」






そう言いながら入って来たのは武田先生。






「酸素マスクつけようね。」






口にマスクを当てられる。






どうして、私ってこうなのかな?






もう嫌っ!!!






「ゃめてっ!!!ハァハァハァ。






止めてよー!!!」







マスクを外して残った力で先生と看護師さんに抵抗を続ける。







熱のせいか、自分が何してるか分からない。






再び涙が溢れ出た。







「ヒッ、ハァハァ。ヒッ、ハァハァ。」






止まらず呼吸が余計に苦しくなった。







「ハァハァハァハァハァハァ。」






「綾ちゃん、大丈夫だからね。」






そういうと、私を起き上がらせ、武田先生は強く私を胸に抱きしめた。





「一度落ち着こう。」






先生の大きな胸に当たっている耳から、






ドクッドクッドクッ






と先生の心臓の音と先生の匂いが次第に私の心を鎮めていった。




「辛いよな。





焦るよな。もう試験だったもんな。」









そう優しく言葉をかけられた。






その言葉を聞いてもまだ涙は流れ続けるけど、呼吸は落ち着いてきた。






ボーッとする頭で泣いたせいか、頭が痛い。






手を頭に当てたせいか、先生が気づいた。






「綾ちゃん、頭痛い?」   






そういわれ素直に頷く。






「解熱剤と痛み止めの入った点滴するからね。






マスクも付けておくから。






これから、ナースステーションの隣の部屋に移動しようね。」







重症な患者さんが入る部屋だ。






やっぱり試験までには間に合いそうにないのかな。

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