そこにいた
「先生・・・白衣ありがとう。」
肩にかかった白衣を脱いで、軽く畳んで渡す。
色々考えて、イライラした気持ちをなんとか納得させ、自己解決させ、気持ちを切り替える。
そろそろ・・・・・・私の憩いの場を替えた方がいいのかも。
新しいところを見つけなくちゃ。
こんな風に誰かに知られて、一人の時間を邪魔されては、私の心は休まらない。
そう言ってフッと立ち上がると、
「ん?部屋戻る?」
と尋ねられたと同時に
ふらっ
「あ、危ないっ」
と背中を支えられ突然立ち上がるから、貧血起こしたんだよ。
「こんなに体は悲鳴を上げてるんだから、部屋でゆっくり・・・ね。」
私の渡した白衣を着ながら、先生に部屋へ戻るように促される。
「・・・・・はい。」
まだここにいたいけど、この状況では部屋に戻るしかない・・・・・。
ここでこの先生とは、さよならかと思って廊下を歩く。
……ん?
チラッと振り返ると、私の後ろをついて来る。
先生はこれからどこに行くのだろうか、
……かなりピッタリついてくる。
あまり興味はないけど、聞いてみる。
「先生、何科の人・・・?」
「ん?
それは、秘密。」
秘密って・・・・・・なぜそうなのか、一体どこなのか、大して興味ないけど。
私の名前をフルネームで知っていた。
小さな病院でもないのに。
たまたま私のカルテをどこかで見たのだろう・・・。
そして、たまたま通りかかって、私がふらふらしてたから、
医者として患者を部屋に戻そうと思い、声をかけたんだろう。
そういえば…
白衣の名札に「各務 亮」ってあった。
かがみ りょう?
かがむ りょう?
読み方が分からない……まぁいいや。
そのまま後ろを気にせず部屋に向かった。
部屋に着いて扉を開け振り向くと、
先生は・・・・・いなくなっていた。
一体何だったんだろう。