そこにいた

ガラッ 





部屋を開けてベッドを見ると、





あっ。





「どこに行ってたの!?」





聴診器を首にかけて立っているのは、




私の主治医、武田先生…。





いつもと違う口調に、呆れた顔。





怒ってる・・・・・・?


 


「ちょっとそこまで・・・」





ボソッと呟く。





いくら入院してるとはいえ、私がどこに行こうが、どう過ごそうが、先生には関係のないこと。





「検査の時間、とっくに過ぎてるよ。」 





あぁ・・確かそうだった。今日は検査って聞いてた。




でも、そんなことはどうでもいい・・・・・。






定期的に検査したって、どうせ何も変わらないんだから。






目を伏せながらそんなことを思っていると、





「はぁ、明日にしたから・・・」





ため息をつきながら言われる。




こんな患者に飽き飽きしてるのだろう。




検診なんて明日でも明後日でも…




いつやっても一緒。





「綾ちゃん、





ベッドに座って。   





聴診するから。」   






形だけの診察にホント・・・・・うんざり。






「綾ちゃん?」






扉の前で一歩も動かない私に、痺れを切らした武田先生は、私に近づいた。
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