そこにいた
ガラッ
突然、扉を開けて入ってきたお母さん。
「あな・・・っ!!!」
ん!?
入ってきて早々、私よりも隣にいた武田先生を見て驚くお母さん。
ん?何!?
今、なんて………?
確か……。
「・・・お母さん?今、なんて言ったの?」
驚きを隠せない武田先生と既に落ち着いた顔のお母さんが、武田先生の隣の椅子に座る。
そして、深呼吸したかと思うと、ゆっくり話し始めた。
「綾子、今日はね、本当のことを話さないといけないと思ってきたのよ。」
「服部・・・さん!」
武田先生が隣から手で制すようなしぐさをする。
「いいの、話さないといけないの。」
武田先生の顔をまっすぐに見ているお母さん。
「でも、今はまだ回復してないし。」
「綾はこの話を聞かないと、ちゃんと治療に向き合わないわよ。
本当のことを知った上で、これから生きていかなくちゃいけないのよ。」
そう言って今度は私をしっかりと見るお母さん。
「ねぇ、なんの話?
お母さんと、武田先生・・・。
何を言ってるの?」
そう言いながらも、お母さんが言おうとしていること、
少しわかったような気がした。
部屋に入ってくるなり、言った言葉は、
『あなた』
そう、武田先生のことをそう呼んだと確信していた。
そして、武田先生のお母さんに対する話し方。
そういえば、術後に目を覚ました時だって、武田先生とお母さんの距離は近かった。
もしかしたら…過去に何かあったのかもしれない。