そこにいた
「・・・・・・それで、このことを話して一体なんなの?」
そう、今更そんなことを言われても……。
勝手に移植手術もして……。
お母さんから一方的にホントのことを話され、複雑な気持ちの私はイラついていた。
『そうなんだ。』と言えば、相手も傷つかないのに。すんなりお母さんの話を受け入れた自分にも腹ただしさがあった。
「武田先生の子供だなんて……。
ちゃ、ちゃんと…DNA鑑定をしたわけじゃないんでしょ?
本当に親子だなんて分からないじゃないの!?」
武田先生の子供だと言われただけでは、信じることができなかった。
というより、信じてしまっていいのか。死んでしまったお父さんのことを思うとと……。
「鑑定なんてしてないわ。
だけど、あなたは私と武田先生の子供なのっ!
あなたに移植された肝臓は
『さつきっ!それは』
そこまできて分かった……
全てがつながった。
武田先生は手術を受けていた。
武田先生とお母さんの間に生まれた子供は、
私。
私に肝臓を提供してくれたのは……。
「あなたの肝臓は、剛さんのものよ。
それは既に検査をして肝臓も全て同じだって分かった上での検査なの。
本当のお父さんからもらった肝臓を一生、大切に生きなさい。」
そういうお母さんは、気付くと涙で服を濡らしていた。
私は涙が渇き切っていた。
喉もカラカラになっていた。