そこにいた
「綾ちゃん、ベッドに行こう。」
私の腕を掴んでベッドに寝かせようと引っ張る武田先生。
もううんざり……こんなことして治るわけではないのに。そっとしておいて欲しいよ。
そう言いたい。
入院してたって、私がどこに行こうが、何をしようが、何を食べようが……
それは私の勝手。
ここにいる医者や看護師に監視されて、決めつけられるなんておかしすぎる……。
検査だって、何の意味もない。
だから私は、目の前にいる子供の頃からの主治医である武田先生に、今日こそ言いたい。
だけど、出てくる言葉は……。
「・・・・・・はい。」
腕に入っている力から、いつもの穏やかな武田先生はどこにもいない。
いつもいつも何も言い返せない、抵抗できない私は、
結局「はい」といつも返事をしてベッドに横になる。