そこにいた
私は生れつき肝臓が悪い。
それでも赤ちゃんの頃は普通の生活を送ってきた。
何かあれば大きな病院で診てもらっていたけど、特に異常はなく過ごしていたそうだ。
だけど……。体が成長すると共に、だんだんと成長についてこれなくなった肝臓は、ある日突然悲鳴を上げた。
それからの入退院生活。
武田先生が主治医となってもう何年だろう。
そして私には父親がいない……。
病気でこの世を去った……。
そのことは、あまり考えないようにしている。
だけどもし、今も父が生きているなら、こんな感じ何だろうか……。
武田先生みたいに私に親身になって、時には心から怒ったりしてくれるのだろうか。
武田先生を父と見立ててしまっているせいか、私はいつも反抗的なことを心の中で思ってしまう。
でも、口に出しては言えない。
きっとそれは、本当の親子ではないし、それ以前に、そこまで言う度胸がないから心の中で言うだけにしている。
よくそんな自分に腹立たしく感じるのだけど……。