鈍感な君へ
「あの子にはたくさん辛い思いをさせてしまったわ…」


真面目な声になるばあちゃん



まるで俺の存在に気がついているかのようだ




「あの子の父親が晴樹を引き取りたいって言っているのに
 私はそれを断り続けてるの」




「晴樹に聞きました。でもそれは…」




「私の我が儘よね」






彩奈の言葉を遮ってばあちゃんが言った






目には見えないけど
申し訳なさそうに笑うばあちゃんの顔が
浮かんだ






「だから、父親に引き渡すことを決めたわ。
 それが晴樹の一番の幸せだから」




「…それでいいんですか?」





控えめな彩奈の声
 




「そりゃあ、寂しいわよ。
 でも晴樹が幸せならその寂しさも
 乗越えられる。あの子の笑顔が
 支えになってるのよ。今でも
 そしてこれからもね。だから私はいいの」






「…っ」




「…だって、誰よりも



  あの子を愛しているから」





その言葉を聞いた瞬間堪えていたものが

溢れ出した



その場にしゃがみこみ目からあふれ出る


涙を止めることが出来なかった
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