鈍感な君へ
「晴樹、先生なんて言ってた?」





ばあちゃんが言った




「え…あ、ちょっと様子みるために…
 もうちょい入院だって…」





咄嗟に出たうそ




でも誤魔化すのには十分だろう





「そうかい…」





そう言って窓の外に視線を移す
ばあちゃんはまるで
全て分かってるようだった


少し悲しそうな眼で


もう一度 そうかいと呟く



その姿がやけに悲しく見えた





「…っ、ばあちゃん、荷物取ってくるから
 また後でな」





いたたまれなくなって
逃げるように病室を出た






「はっ、はるき?」





慌てたような彩奈の声が聞こえたけど



お構いに無しに早足で歩いた





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